違和感というあいまいな表現

「違和感」という言葉を私がよく使うようになったのは、今の会社に入った頃からだ。取引先の担当者は、着メロをリテイクする際、「ここに違和感があります」という言い回しをよく使った。


違和感って何だろう?音質?フレーズ?バランス? 駆け出し業者の私たちは、リテイクのたびに全員で考え、検証し、納得してもらえる接点を探した。その結果、現在までの約8年、契約をキャンセルされることなく続けていられたのだと思っている。


商品だったらそれでいい。でも対人関係ではそうはいかない。違和を解決するにはとても骨が折れるし、どうしたって分かり合えないことの方が多い。大人になるにつれ、我をおさえてやり過ごし、無難な関係を保つことを覚えていく。


傍から見たら、相当な自信家に見えるだろう。言葉に敏感で、折れない、曲げない。まったく扱いづらいタイプの人間だ。そんな自分を好きになることができず、努力してみた。いちど他人の家の嫁にもなった。でもダメだった。譲れない芯が大きすぎて、自分でも手に負えない。


今、傍にいるひとは、人当たりは良いが、他人を寄せ付けない心の芯が思いのほか大きい。反射的にイヤと感じることも似ている。暴走するとしばらく止まらないところも。やりたいことは周囲に迷惑をかけても絶対貫くこととかも。彼には今のところ、違和を感じることがほとんどない。年齢が離れているので、もしかして、かつての婚約者のように無意識に許しているのかもしれないが、とりあえず、現在のところ心は安らかだ。