古い引き出しが片付かない

尊敬する物書きの友人が最近出産した。彼女はいま息子にかかりっきりで、妄想の世界を描く暇がまったくないようだ。人間を一人前に捏ねあげるのは、大変だろうがすこぶる面白いんだろうな。多分産めぬであろうリミット間際の拙は、せめてその速筆だけでも受胎させてもらえないかと思ってしまう。

彼女は物語を作ったあと、あまりその作品に執着しないといっていた。その逆なのが拙かもしれない。何度も読み返す。失敗が見つかる。直してもいいんだけど、できの悪い子供ほど可愛いというかなんというか。だから放置しておく。拙の引き出しは古いものと使えないもので塞がっていて、ちゃんと開ききらない。

お蔵出しは、ときどきつづく。