千年紀末に雨が降る

夏の攻め気な大粒夕立とは明らかに違う雨が降っている。


染めたてのデニムな色した夕方の風にゆらゆら揺れ、ひょろりと生っちょろい蛍光のあかりに透かされた雨粒。夏なら物悲しいが、秋なら悪くない。あらゆるものが憂鬱に染まる時期だから大いに許される、センチなメンタル。

女の子は肌の疲れを自覚してセブン・イレブンなんかでモンブランプディングと一緒にビタミンCの錠剤とか、プラスティックの買い物カゴに放り込んで少し安心する。男の子は半そでTシャツの上から間に合わせのジャケットを羽織ろうとして、前シーズンから持ち込んだ自分の匂いで少し安心する。

それにしても、夏がずいぶん長くなったもんだ。前は8月の末にもう気配を感じていたのに。そういえば東京に住むようになってから鈴虫の擦過音を聞いた覚えがない。ぽろりと道路に落ちた蝉とか、土の上で踏みしだかれた桜の花弁とか、季節の亡骸には幾つも遭遇するのに、“はしり”との出逢いが少ない。激しい揺れ幅に惑わされているうちに、突然季節が変わる。ちいさな音楽に耳を澄ませる余裕もなく。

クレッシェンドとディミヌエンドが重ならない四季なんて。


でも東京が悪いわけじゃないんだ。