禁断の実ほおばって、月の裏を夢見る

izumi_yu_ki2008-02-14



不二家が企てたチョコレート戦争の当日は夕飯を過ぎた頃までもクチコミ評判のよい店の前に長蛇の列。おいしいものを選んであげたい女心は痛すぎるほどわかるが、

(あなたがくれたチョコレィトだったらなんでも同じぐらいうまいんだから、さ)

iPodを耳に突っ込みながら、そんな言葉をあえて小さく口に出してみる。井の頭線で隣に座った、ちょっと今風な男子は、A4サイズな紙袋を面倒くさそうに持っていた。おそらく中にはチョコがいくつも入っているんだろう。会社でもらったのかな?

午後8時半の商店街をゆっくり歩く。急いだって家には誰もいない。ただ照明器具やパソコンが、電源を入れてほしくてじっと待ってるだけ、だもんさ。最近デイリーに飲む「淡麗」(グリーンじゃないやつ)と、惣菜屋で買った「あっさり海鮮チヂミ(小)」をもち、立ち飲みならぶ繁華街をいつものようにシラフで蛇行歩行。


拙もチョコを用意していた。モロゾフのちっちゃくてかわいいパッケージのやつ。7種類あって、それぞれに「サクセス(大願成就?)」とか「ラブ(真実の愛?)」とか「フレンドシップ(変わらぬ友情?)」とか、意味あるメッセージと、それをかたどったものが入っているというものだったはず。

詳しい意味がわからなかったので説明書を一緒に貰ってきたのだけど、いま家ん中を探しても見つからない。今日は燃えるゴミの日、ってんであわてて捨ててしまったのかな。でも、まあいいか。すべてのプレゼントは「愛」みたいなもんなんだから。どんなもんでも。

ほっと気を抜き、酒をのみ、キリンジの「エイリアンズ」を聴きながら、爪にオイルを擦り込み、パールオレンジのマニキュアを塗り、ローズのネイルシールを左手の薬指に1枚だけ貼ってトップコートで固定した。自分の年嵩を嘆いてしまうことの多い最近。でも、だからこそ、ほんのわずかずつでもいいから女らしくありたいと最近思っている。強く強く、毎日が終わるたびに昨日より強く、それを思っている。


あたしを意識しているひとじゃない限り、気づきゃしないほどささいなグルーミング。でも、いいのだ。「あたしのヴァレンタインは、ひとりへのスペシャリテしか買わない」のと同じぐらい、他人には関係のないことで、いいんだ。

で、チョコのついでに自分へプレゼントしたのが、ちっちゃいちっちゃいサボテン。名前はまだない。慈しみたい心を、この子へ向けるんだ。しばらくは。