サイレン(ト)の詩がきこえる

izumi_yu_ki2007-07-09

先週末は少し遠い町まで電車で向かい、もうじき消えてしまうかもしれない風景を楽しんできた。

散歩昭和30年代に建てられた「阿佐ヶ谷住宅」は、公団住宅だがとても趣ぶかい集合住宅だった。よくあるマッチ箱型の「団地」もあるにはあるが、二階建てのテラスハウス形式や、アメリカン・ハウスのようなコンクリの平屋もある。山型の屋根もあればフラットなのもある。そしていずれの建物にも広い庭がついていて、ブランコやすべり台がそこかしこに設置されている。レンガで打たれた数字を数えながら敷地内を歩く。歩くほどに風情が変わっていくのが楽しい。名も知らぬ見覚えのない植物をながめ、「これは葉っぱのフチが白いから“アウトライン”」「これは鈴なりに花が咲いてるから“スズナリくん”」とか友人と勝手に名づけあいながらテクテク。薄曇りの天気は厚すぎず、散歩にちょうどよい。


ただ、エリアによっては相当老朽していて、玄関や窓に木片が打ち付けられ、雑草だらけの庭の上には赤錆でいまにも落ちそうなヴェランダが下がっているゴーストハウスのようなところもあった。ブランコのペンキはボロボロに剥げ、周囲はうっそうと丈の高い雑草に覆われかけている。


薄暗くなったそういう場所にぐっと入っていき、深い茂みに身をすっぽり覆われると、子供ん時のひとり遊び感覚が呼び起こされるようだった。(あたしがゴーストタウンの住人だわ・・・)なんて妄想をふくらませながらじっとしていたら、むき出しの足を虫に食われ、現実的なはげしい痒みで大人へ逆戻り。とほほーと苦笑い。


来年には解体が始まってしまうという噂。消えかけてるモダンな団欒、あと一度は訪れたいと思う。そしてまた茂みに入り(今度は虫除け持参で)、じっとしてみたい。