本に挟まった秘密のたのしみ

週末の図書館通いも半ば習慣化した。人気が高い本は予約20人待ちなんてのもザラで、かれこれ4ヶ月も待っている本もあり、いっそ購入しようかとも思うが、読みたいけど買うほどでもないし、と思い直す。忘れた頃に順番が回ってくるのも一興だろうし。で、並んでいる本から「今週の本」を数冊、選び出していく。


図書館で本を借りる時、ひそかな楽しみがある。本に挟まっている紙片を探し出すことだ。


まず貸出の時に挟まれる「貸出票」。世田谷区では貸し出し期限や一緒に借りた資料数、タイトルなどが記されているのだが、前に借りた人のそれが挟まったままになっていることが多い。同じ本を借りた人がどんな本を読んでいるのかがわかり、さらにどんな人なのか、なんとなく推察できるのだ。

「東京散歩ガイド」を借りた人は、他に旅行関連の本を数冊とクラシックCDを借りていた。渋く落ち着いた人なのだろうなぁと、こじゃれた白髪まじりのご婦人を想像する。林真理子「アッコちゃんの時代」を借りた人は、酒井順子のエッセイと「気持ちよく暮らす100の方法」などを借りていて、多分バブル世代でシングルの女性なんだな、と密かにその人と握手したくなる。メイド喫茶で働く女の子が主人公のネット小説「メイド★マシンガン」には、なぜかそれ以外古い純文学小説ばかり借りている貸出票が挟まっていて、「萌えなんか興味ないけど、でも…」と言い訳する青白い顔した青年の姿を妄想。


貸出票以外にも、さまざまな紙が挟まっている。


「つくるひと そのくらし」には、ファミリーマート調布店のレシートが。朝8時に「速攻元気ゼリー」「たまごドッグ」、そして500mlの「ボルヴィック」をお買い上げ。「クウネル」生活に憧れを抱いているが現実は多忙で疲れ気味な20代バリバリ働くお姉さんが職場のデスクでたまごドッグを頬張る姿が浮かぶ。


そしてきょう手に取って借りるか否か迷った「女性下着と性の歴史」には、几帳面にぴったり二つ折りにされた人間ドックの再検査注意書きが。ちょっと切なくなって、思わず(お父さん、頑張って…)と見えぬ借り主にエールを送った。そういえば父の日って今日だったかしら。