物乞い猫の歓楽街
新宿の焼き鳥屋「ぼるが」にてテルミン同期ユニットのミーティング。
テルミンは「ドレミファソ」を弾くだけで喝采を浴びることのできる楽器なので、ちょいと出来るようになるとつい腕を磨くことをさぼってしまう。わたしも最近サボりがちだった。しかしそろそろそれではイクナイと同期揃って思い始めているようだった。
お金を払う価値のある音を出したい、と足並みが揃った。揃わないのはレパートリーと腕。それってなんにもないのに等しいじゃん、と自己突っ込みを内心入れつつエビスを流し込む。
ぼるがの焼き鳥は美味というより風情がある。佇まいそのものが飲兵衛を惹きつけてやまない。青臭い塩ラッキョウも、水っぽい冷や奴も、ぼるがだと許せてしまう。そこで飲むだけでクリエイティブなことを一つこなしたような気になってしまうところが落とし穴である。
二階座敷の窓際から見えるトタン屋根に一匹の猫がいた。こっちを向いたままじっとして微動だにしない。うっかりウインナの切れ端などあげてしまったら、すぐに姿を消し、そしてまたすぐ三倍になって現れた。同じ顔したブチ猫たちはエサをやる人間のことはまったく眼中にない様子。可愛いければ可愛いほど憎たらしい。最後まで窓際にはり付いていた猫家族。石の上にも三年。熱きトタン屋根の上には3時間。
何を得るにも経験と根気。