430ヘルツのプチ・クロワッサン

izumi_yu_ki2007-05-29


・私生活を詰め込み肥満する手帳
かなりデカいし重いが常に持ち歩き、気づく言葉があれば書き留め、ごはん食べれば詳細を記録し、悲しい時は悲しいことを書き、心おどる出来事があれば朱で囲みつつ大きな文字でしるす。一日に何度も開閉するから革はガワガワだし本文はゴヨゴヨ、すでに扇型に開きはじめている。そこまでして使い倒す手帳は、そういえば彼からのプレゼントだった。

話したいことがたくさん溜まってきたが、ありすぎてまとまらない。本日はだから、ただの気分でツラツラとしたためることにします。

・鍵盤ハーモニカと邦楽と雅楽
先日、笙・琵琶と琴、そしてなぜか鍵盤ハーモニカという編成のバンドのライブを拝聴した。血統がはっきりせず邪道扱いの鍵ハモと正調雅楽楽器の笙は音色がびっくりするほど溶け合い、美しいユニゾンやハーモニーを奏でていた。

和楽器のチューニングは西洋音楽のそれと違うはずで、この種のコラボレーションを聴くたび、ピッチの方向がだいぶ気になるものなのだが、今回はそれがなかった。なんでだろう?とハテナマークを頭ん中にユラユラさせていると、プレイヤーのほうから説明があった。

「この鍵盤ハーモニカは世界に一台しかないものなんです」

見たところまったく変わったところは見受けられない。なんだなんだとさらに脳内ハテナを揺らしていると、こうおっしゃる。

「この鍵盤ハーモニカは430ヘルツでチューニングしているんです」

和の楽器のチューニングは、440Hz台ではなく430Hz台でチューニングするのがスタンダードらしい。「このほうがいい音色が出るんです」という説明だったが、ほかにも理由があるんだと思う。それにピッチを合わせるために、鍵ハモ製造会社に直接掛け合い、特注したという。なるほど。

やや低く憂いを含んだ音階は、たしかに余韻まで美しかった。

・あと6日でサヨナラ
いいパン屋を見つけたと思ったとたん、もう閉店日が決まっていたという不幸。そこの名物であるプチ・クロワッサンをグラム単位で買い、町はずれの公園でヴィッテルとともに食べる。さくり、バターの香ばしい匂い、それからアンチョビのしょっぱい旨み。これを食べられるのも、あと1回ぐらい。残念。

彼の住んでいた町にあった、ハードロックがガンガンかかるラーメン屋も今月で店をたたむらしい。またシモキタの某バーも、おととい閉じてしまった。正直にこつこつとベストをつくすお気に入りは、なぜにこれほど短命なんだろう。

ゆく川のながれはたえずして しかももとの水にあらず な 浮世。