湯気のむこうにフレンドリィ

テレビや映画みたく訳知りなおやじも、ポツーンと哀愁感じるロケーションも、拙の活動半径には皆無だが、有名なおでん屋なら2、3軒知っている。

・おでん学園
花森安治(@暮しの手帖)ばりの女装とかわいらしいヨボヨボ具合で人気だったマスターが営んでいた。一回でも来店すれば学生証を発行してくれ、常連認定を受けられる。おでんはほぼ放っぽらかし、たまに闇鍋おでんと化していることもあった。ゆでみかんとか。

屋台をそのまんま家の中に引き込み、キツキツな店内。見知らぬ者が密着して飲み食いしているうちに、急速に両隣と仲良くなっていく。その親密カーブはあまりにも激しく、気がつけば見知らぬ人の家でザコ寝してた、気がつけば遠くの駅前でソバ食ってた、なんてこともある。寂しがりやにはたまらない店だった。今は店主が亡くなり、店の大家さんが店とスピリットを引き継いでいるようだ。


・宮鍵
下北の風情あるおでん屋。常連になったらさぞかし恰好いいだろうなぁと思いつつ、たまにしか行けない。それは若干高めの値段と、高めの敷居のせいか。


・節子
目下いちばん訪れる屋台。下北駅バラックの一番奥にちんまりと赤ちょうちんを提げている。ここで拙は、時に毛嫌いされる「チクワブ」と大根を所望し、ビールを1本。チクワブは1本まるまる、大根もほぼ1本まるまる。しかも安い。ちょいと飲んで食べるぐらいなら1000円でおつりがくる。たっぷり食べても2000円を超えることは皆無だ。

ぜんぜん笑わないし喋らないマスターは、先代「節子さん」の息子さん。年内で屋台は閉めてしまうというが、できればもうちょっと頑張ってほしいなぁと思う。せめて下北の再開発でバラックが壊されるまで。

ああ、食べたばかりだけど、夜もおでんが食べたくなってしまいそう。