甘くもすっぱくもない巻きずし

izumi_yu_ki2005-11-21

1日しかない忌引を月曜日にあてるか火曜日にあてるかで大いに迷い他家に嫁いだ身重の妹と涙を流す暇もなく雑事に翻弄される母へ交互に電話し迷惑千万かつ使えないダメ娘の烙印をぽんぽんと額に押され祖母に会いたい気持ちより億劫さが増す無責任ねえさんはアタシ。

アメリカンコーヒーのまずにいられない。月ウサギ印の琺瑯ポットでペーパードリップ

祖母の記憶をたどっていたら、ふと、母の太巻きに行き当たった。運動会や発表会などの時のお弁当。ふだん食べられないものだから嬉しかったけど、正直そんなにおいしくはなかった。ご飯はやたら酸っぱく固く、干瓢はピンク色の田麩と競えるほど甘い。あれは祖母仕込みの味だったはずだ。祖母の味は、酸っぱいものはとにかく酸っぱく、甘いものはとにかく甘かった。そして行事の時にはやはり寿司を巻いていた。

いつか自分も・・・とあこがれていた。割烹着で巻き寿司をこしらえる姿は、成熟した女にしか得られない美が溢れている。年齢だけは成熟してる拙。もしうまくできたら自信がつくぞ、と思い立つ。そうなると、試さずにはいられない。

「ちょっと、やってみるか」と、手巻きずしの細い巻き簀を取り出し、韓国風海苔巻きを作り始めた。ごはんにごま油と塩を混ぜ、魚肉ソーセージときゅうりと卵焼きを包む。包丁をぬらして切る。が、うまく切れない。海苔が湿気ていたからか? 何とか切り分けた断面を見ると、具が無惨に片寄っている。味はいい。が、とても公表できる代物ではない。急いで(誰も見てないけど)、腹の中におさめ、証拠を消した。

いやはや。やはりだめだ半人前だ。というか巻きずしって、自分のために作るもんじゃないよね。誰かに作ってあげるとか、アウトドアに持参するとか、そういう切羽詰まった機会がないと成功しないかも。愛情も一緒に巻いて巻いて。