幸福な人生について考える

「日本人の「幸福度」は−阪大教授ら概念数値化」(産経新聞11月18日)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051118-00000000-san-soci
記事によると、日本人が「幸福だ」と思う断片を集めると「30代・都会暮らし・専業主婦」らしい。これが最高の幸せ像と納得するほど素直な人はいないと思うが、俳優とモデルとノーベル賞受賞科学者と文豪と自動車王と若者と年寄りの良いところを切って貼って作るような真似など、およそ空しい。ヤフーニュースもまったく、こんな見出し(「最も幸せな日本人像は30代、都会暮らし、専業主婦」をつけちゃうこと自体、センスが悪いね。
それより、悲しいことに、40歳を超えた後には加齢ごとに「幸福度」は下がっているというではないか。海外で同様の調査を行ったら、まったく逆の結果になったそうだ。オーマイガ。若者天国?奥様天国?馬鹿いうんじゃないよ、未来が楽しみでなくなっちゃうじゃないか。年をとるのは誰にも止められないというのに。

さっき旅立った祖母の人生は、幸福だったろうか?

ゆっくりと赤ちゃんに戻っていき、されど寝たきりにもならず、ケアハウスで倒れて2週間あまり。祖母の最後は、付き添っていた母や叔父たちが昼食から戻るのを待ち、帰ってきた途端に血圧がゼロになったそうだ。

拙は数日前、まだ自発呼吸ができる状態で見舞いに行き、「眠そうだからまたくるね。あったかくしてね。早くよくなるんだよ」と声をかけると、わずかに、でもはっきりと「うん」と手を振って頷いた。もうこれが最後の会話かも、とわかっていた。一昨日に喪服を買った時、袖が少し長かったのだが、直しに出すのは止めた。すぐに使うかもしれないから・・・。

すべての愛しき人たちの顔をすべて見届けてから旅立った祖母は、決して不幸ではないと思う。向こうには、姉弟も両親もじいちゃんも、昨年他界した長男までも待っている。幸福かどうかを考える手間なぞ不要だろう。

これから何日か、黒い服を着て菊と線香の匂いに包まれながら、自分の生き様を考えさせられることになるだろう。ひとまず今日は、この目の前の仕事に切りをつけ、達成の幸福感をひとつ増やすことにする。