微笑みがえし

さよならホンモノのいずみさんもう会うこともないだろうし町で声をかけても多分もう微笑み返してはくれないだろうねそりゃそうだもうあの店のバーテンダーじゃないんだもん明日から。

マルガリータのまずにいられない。彼女の作るカクテルはオーソドックスでアルコールがだいぶサービスされているもんで、普段より早く酔ってしまう。

彼女が最後の夜、店にはたくさんの人が入れかわり立ちかわり顔を見せては帰っていった。三茶在住・めちゃくちゃ日本語が達者なオーストラリアの兄ちゃんは、何時間もカウンターに陣取り、延々とヒューガルデンを飲んでは隣のお姉さんにちょっかい出したりしてた。そのお姉さんも、テーブル席のあの人たちも、みんなみんなここで見知り、何度も酌を交わした仲だ。次々と会釈していく。入りきれなかった人が外から電話をかけてくる。「おーいいま外。久しぶりなのになぁ。なあ、そこ出て他んとこいこうぜ」「い、いやーもうたくさん呑んだし今日はもういいよ」

そんなこんなで数時間。最後のほうは、例によって記憶があいまいだ。