ゆ・き。気がつけばいつしか
正月休み初日なぜか早く目がさめ気がつけば電車に乗りそして新宿のスターバックスでココアを頼み上に浮かぶクリームを唇でよけながらゆっくりと喉に流し込んでいる。
おかわりのまずにいられない。暖房がきいているとはいえ、窓辺に1時間もいれば体も冷える。コーヒーはお腹が痛くなるし、ミルクは腸にあまり優しくないから紅茶にでもしようか。
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今日は、朝から雪が降っている。2年前の正月も、雪が降っていた。
あたしの育った横浜をシュガーに見せてあげたくて、伊勢佐木町のワシントンホテルに宿を取り、へとへとになるまで歩き続けた。灰色に明けた朝、固いベッドにぐったりと眠り込む彼を置いて、あたしは外に出た。
かつて住んでいた町は、すっかり変わっていた。なじみの店はビルごと姿を消し、見たこともないショップが大きな看板をキラキラさせながら客を誘っている。伊勢佐木商店街にスターバックスができていたことも、知らなかった。
雪を払いながらカウンターでラテとクロワッサンを頼み、通りに面した大きなガラス貼りのカウンターに座った。両手をマグであっためながら一口ずつ飲み、飲みながら、彼とあたしの将来を考えた。いろいろなことが普通とはいえない、切ない関係。
ハッピーエンドじゃないだろうな。たぶんあたし、泣くんだろうな。その時、ちゃんと大人らしく強がってニッコリできるかしら。言えないで泣くばかりかしら。
ラテとともに、これから流すであろう涙も一口ずつ、ゆっくりと飲み下した。塩気のきいた、モーニングコーヒー。マグが空になる前に、たまらずホテルに戻って、まだ寝ぼけ眼のシュガーを抱きしめたっけ。何があったか知る由もない彼は、とりあえず長い両腕であたしを抱きとめてベッドに横たわり、また夢の中に戻ってしまったっけ。
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今月、あまりにも色々なことがありすぎて、まだ心の整理がついていない。体も、こわれた。あんなに食いしん坊な私が、水以外の食物を受け付けなくなった。食べ物の香りがすると吐き気がした。何度も洗面所に駆け込み、せき込んだ。
トラブルやアクシデントには、かならず前兆があり、本人はあらかじめそれを感じ取っているものだ。おそらく私は、何年も前から、その異変を察知していたのかもしれない。だからこそ、必要以上の酒を飲んでは荒れ、不安を体から追い出そうとしていた。どうせ壊れるものならば、一気に壊れてしまえ、と。そして女の魅力を喪い、ただの自覚なく口うるさくつまらない年増になりかけてしまった。
今さら21歳の乙女には、なれない。「守ってあげたい」とひとに思わせるような可憐さを競うことは無理だし、意味のないことだ。今、あたしがすべきことは、現実を逃げずに受け止めること。そして、本当の意味で、人を思いやること、愛することだ。
これを書いたら、新しい傘を買って帰ろう。給料もぶじ出たことだし、少し大きめで、少し上等のやつを。