キッチンにはハイライトもウイスキーグラスもなく
がたんごとんと肩や膝を角にぶつけながら玄関にたどりつきがちゃんがちゃんどかんと扉を開け一歩入ると右側の洗濯機の上にはシュガーが脱ぎ残したパジャマが丸まっていて右側のキッチンを見ると洗いそびれた弁当箱がしいんと水につかっていてそのあまりの静けさに悲しくもないのに少しだけクスンとべそをかいた。
お水のまずにいられない。遅くに帰り、泥のように眠り、朝起きたら、からだじゅうがカラカラだった。ごくごくと飲み、ざあざあとお腹の中を水で洗う。旅行疲れもあって体のだるさがマックス。会社は午前半休にして、再びゆっくりとベッドに横たわる。
***
残業帰りの駅前で、旧知の呑み仲間とバッタリ遭遇し、そのまま彼の店に誘い込まれた。バラックみたいなところによろりと立つその店は、はじめてなのに妙に懐かしく、そこでの呑みは楽しかった。楽しかったけど。
居心地のいい場所には、自分とおなじような人が寄り集まっているものだ。昨夜の店も、趣味や年齢や、同じカケラをもつ人たちばかりで、そこがうれしかったが、酔いの回る頭にとつぜん、ひとつの言葉が浮かび、その途端、もしかしてここに居てはいけないかもしれない、と思ってしまったのだ。
ろくでなしの、おとな。
あたしはまだ、ロクデナシになりたくないよ。