王子とツバメと女神様

町に立つ美しい王子の像は「困っている人を助けたい」と願い、はぐれツバメの助けを借りて、目にはめた宝石や身に纏った金箔を貧しい人達たちに分け与え、丸裸になってしまう。ツバメモ、冬の訪れとともに最後のキスを王子と交わしたあと凍え死んだ。王子の体は心臓から二つに割れた。でも、ツバメの体と王子の心臓は尊いものとして天国に召された。



前、あの子のことを「王子」と密かに呼んでいたことがあった。でも拙の周囲で彼は密かに「ツバメ」と言われていた。どちらも前述の物語の意とはまるっきり違う。ひどく俗っぽい揶揄だった。


満たされてたはずなのに、心にはいつも虫ピンが浅く刺さっていた。時々自ら針の頭を押し、チクリチクリと痛みを与える。自分に課せられた義務のように続けていた。何も悪いことはしていない。やましいこともしていない。なのに、罪深い女だというレッテルを秘密裏に貼られているような気がしていた。満ち足りていたけど、苦しかった。


痛みが目に見えるものだったら、きっとブドー状にたくさんの痕が残っているかもね。過去形だって。


今だって。