雇用を守るための方法

失業、求職、就職、ワーキングプアという言葉が他人事だと思う方はそうそういないでしょう。誰がいつ職を失ってもおかしくない。出社したら会社が夜逃げしていたなんてことも、笑い話やフィクションの域をとうに超えた珍しくない事象。瀕死のわが社にさえ、毎日のように派遣会社や斡旋関連の営業がやってくる。


たぶん仕事自体は結構あるのだ。ただ、それを行うだけのさまざまな実力が、現在の雇う側また雇われる側の双方に欠けているのだと感じる。


必死につかんだワラは、契約書類がいっさい存在しない通販や貿易業務の雑用だとわかった。案件はたくさんあるが、どれも未定。業務を担う者が決まるまでは具体的な資金調達、仕事のシステム、雇用待遇さえ一切未定というのだ。


今の業務の片手間にちょっとした事務をするだけだ、と言うが、とてもそれでは済まないと思う。就業時間外でも、先方の状況によっては働けという。場合によっては家で対応することもあるだろうとも言う。これらはいずれも業務内容の詳細がまだわからない。会社設立さえされていない。それを受け容れろと、私と後輩は命令されたのだ。


社員のクビを切らず何とか雇用を確保したいという気持ちはわかるが、何度も違う事業に手を出したが継続できず損をした経緯のある代表者がつかんだ今までで一番信用度の低い畑違いの業務を、「はい、会社のために喜んで引き受けます」とは、とても言えなかった。後輩も強い不安を感じ、今、説得に抵抗しているところだ。


社会保険未加入、健康診断も有給を消化して自腹で行く(だから殆どの社員が行っていない)、いくら頑張っていても、従順でない社員の実力は評価されず、その人が辞職して何年も経ちその人のことを誰も知らない状態になっても繰り返しトラウマだと語る状態は、入社後から同じ。それでも皆が辞めないのは、ここが音楽制作会社だからだ。音楽をつくりたいからだ。それが一般的には音楽的評価の低い着メロだったとしても。