センチメンタル・シティ・ロマンス

ひとつまたひとつと季節を周回するたびに、乙女はどんどん臆病になってしまう。ただひとつの恋を始めるだけなのに、ハッピィ・エンドなんてどうしたって叶えられないとため息をつく。とりあえず平常心の振りしてiPodの白い血管を耳につなぎ、歌のなかに逃避して、かなしみを止血する。

季節をあっという間に疾走するエイジング乙女は、周回ごとにどんどん都合よい女に変わっていく。あなたのことがよくよく見えるから、ほしいものをさりげなさ装って差し出したり、他のことに夢中だけど心が動けばここにきてくれる、でもここには来てくれない、という事実をさも関係ないように、ただの知り合いとして振舞ってあげることができる。


iPodの血管から流れ込む、美しすぎるハッピィ・エンドに逃避しきれないかなしみが、目のきわの皺をぬらす。