ちいさな手・ちいさな心

izumi_yu_ki2007-04-05

たったひとりの姪に会いたい一心で、疲れ切った体を起きあがらせて川崎へ向かった。よく見ると下の歯が一本、ほんの1ミリぐらい顔を出している。どれダッコ、と持ち上げると、体重と反比例する不思議さで抱きやすくなっている。ぐにゃぐにゃだった生まれたての生物から、だんだんと「人間の赤ちゃん」に育っているのだな、と感じる。


彼女の手はまだわたしの四分の一にもならず、爪なんてほとんど見えないぐらいしかない。でも確かにそれは、わたしや彼女を産んだわたしの妹のそれに似ている。軽くこちらの指を差し入れると、ぎゅっと強い力で握り返してくる。するとじわっと温かいものが広がってきた。なにものにもかえられない、血のつながりの強さ。



なんのつながりもないからこそ、大事に守らなければならないものがある。


桜の華々しさが今年はいやだった。見事な並木が葉桜になり、散った花びらが踏みしめられ薄汚れたピンクの絨毯になったところでやっと安心した。通勤がてら、桜の木を見上げて観賞。パレードは過ぎ去り、茶番もやがて終わろうとしている。


きれいごとなら、いくらでも言えるのだ。言ったほうは都合よく忘れ、貰ったほうは都合よく抱きしめる。あけた扉の向こうがカラッポだったとしても、わたしはそこを見届けるまでそれを抱きしめる。ここにいるわたしのココロは、ちーんとかんでくしゃっと丸めてポイな鼻紙ぐらいにしか思われてなくても、わたしは5月の声を待つ。


どんなことになっているのか見届けるまで、わたしはカーテンの裏で泣き続ける。



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花のコメントをはじめ数々のレスポンスをいただき、ありがとうございます。