右にハンドル切りきってもなお曲がれず

テルミンというデジタル楽器は夏が弱点だと、所持歴3年目にしてはじめて実感した。弾き方を知らない時は、空中につくる弦を整える「PITCH」というツマミが何を意味するのか知らなかったし、適当にいつもド真ん中に合わせ、その都度変わるフレット位置に苦しみながら、ま、そんなもんだろうと思っていた。


が、実は「PITCH」調整こそがもっとも基本的かつ重要な作業であるとたたき込まれ、練習の前に必ず
PITCHを合わせるようになって、やっと巷でよくいわれる「テルミンは電源入れるたびにコンディションが違う気まぐれなお転婆楽器」ということがわかってきた。


蒸し暑い夜、PITCHを最大限に切っても空中フレットが延び延びで、とても弾けた状態ではない。エアコンをかけ、気温を安定させてから位置を変え、風を送り、やっとふだんのフレットに近いコンディションを作り上げる。購入して2年半、かなり手荒に扱ってるし、1年以上箱に入れたまま放置してたり不義理も働いているのに全然へこたれなかったマイ・てるぞうも、世の中のテルミンと同じく暑さにゃ弱かった。その不安定さも、今はすごくいとしい。いっそマイ・テルミンの名前を「小夏」にしようか。双方とも全力で可愛がる所存。おばちゃんの名にかけて。