雨音はテルミンの調べ

仕事が忙しい時、あるいはひどく暇で家にいる時、ゲーム買いたてのガキみたいにPCの前に座り込み、延々とネットの中に入り込んでしまう。そんな日の更新文は冗長になりがちだし、ネットの些細なことに心を大きく振幅させ必要以上に深刻に考えて茶々を入れたくなったり。そんな時間があったらアンタはテルミンを練習しなさい、と、わたしの心の中にいる冷静な大人が、面倒くさがりの子供をたしなめた。


日曜日は朝から結構な雨が降っている。昨日のレッスンで、まったくうまくいかなかった恥ずかしさと悔しさを忘れないうちに、とテルミンの電源を入れる。しかし電源を入れてできる演奏エリア“空中弦”が長く伸びきってしまい、弦の途中に体が挟み込まれる形になってしまった。これでは弾けない。もしかして置いてる場所がいけないのかもと思い立ち、キッチンからリビングに移し替えてみたらあっさりチューニングOK。冷蔵庫なんかの白家電の磁場が影響してた?いやそれとも湿度?


同じ曲を何十回も繰り返して練習する。なんとなく弾けている。が何度やっても納得いかない。


気分をかえるため、普段使わない音域を鳴らしてみた。いつもの曲を1オクターブ下げて弾き、低音の振動を体で楽しむ。それからアンテナぎりぎりに指を近づける。高い音域は左手で音量を加減しないとただの金切り声。中音域に戻り、ビブラートを遊ぶ。早く震わせる。臆病な音。ゆっくり震わせる。落ち着いた音。ゆっくり深く揺らす。フランク永井の音。早く深く揺らす。宇宙の音。


雨の日はテルミンの音が美しい。雨が空気中のホコリや雑音を洗い流してくれるからか。