赤い点+緑の点+青い点=こころ模様

izumi_yu_ki2007-03-24

梅見の時期を掃除とモノ捨てとスープ作りで過ごしているうちに、春分の日を過ぎてしまった。道ばたの花はポンポンと破裂するように咲きはじめ、まだ朝晩は冷え込むものの、マフラーを巻かずとも歩ける気候になりつつあるようだ。


何という植物かわからないが、生け垣のなかに、暖かくなると葉の先に赤い新葉をつけるものがある。葉っぱなのに花みたいに鮮やかな色。その芽を見るたび「今年も春が来たんだな」と感じる。


ぽかぽかの休日散歩。思わず鼻歌が口をついて出た。

「うぅえを、むぅいて、あぁるこぅおぅおぅおぅ。
 なみだが、こぼれ・・・」

本当に涙がでてきて、鼻歌はここで止まった。
この曲の歌詞に、はじめてまともに触れた気がした。これが最後まで歌えるようになったら、修復完了のサインと思っていいだろう。だけどそれはいつになるのか。


赤い葉っぱを見ながら散歩した春、びっくりするほどの人混みの中で花火をみた夏、殺風景な部屋でドトールのコーヒーを飲んだ秋、安い熱燗をおいしく飲んだ冬。四回転半の間に起こったエピソードのひとつひとつが色んなカラーのドットみたく、あたしのハートに散らばっている。離れたり重なったりしながら集まり、それらはハートの中できれいな一枚の点描画になった。


こうして毎日暮らすうち、その絵の上には新しい点が置かれていく。それは繰り返され、前のドットと混じり合い時には打ち消していくうち、また違う絵が描かれていくのだろう。でもまだ前の絵はほとんど丸見えで、はだかの指で点に触れてしまうたび、あたしは泣いてしまう。


面影を消すことに何の意味があるのか。問うても答えは返らず、ただ虚空を見ないようにするために、あたしは今日もル・クルーゼで野菜スープを仕込み、床を磨き、庭を掃く。忙しく動くことで、あしたの朝の訪れを毎日ぎりぎりで予約している。