品格はある日突然に

冒頭の事故は、拙の席の背後にある窓に、両面テープで貼り付けたブラインドが、気温の高さで粘着が溶け、はずれた勢いで付属のプラスティックバーがくるくると宙を舞い、拙の頭に落っこちてきたのだった。長さは50cmぐらい。ケガはなかったが、見えないところからいきなりモノが飛び込んできたので、とにかく驚いてしばらくドキドキしていた。

だいたい、重いスチールのブラインドを両面テープでぶら下げようとする方に無理がある。それを提案したのは弊社の社長。オフィスの窓からはギンギンに朝日が入り、窓際の席はとてもPC仕事ができる状態ではない。そこでブラインドをつけることにして本体を買ったのだが、あいにく窓ワクにはそれ用の穴が開いていなかった。大家にビス穴を開ける交渉をするか、別の方法を考えるかだったのだが、社長は一番安い方法を採り、みずから金物屋でテープを買ってきた。テープが外れてバーが飛んできたのは、ぶら下げて数十分後のことだった。

社長は大笑いしながら近寄り、「やっぱ無理かぁ」と言い、太陽の熱で接着が溶けただの、現状復帰しなきゃだから強いテープは使えないしとか楽しそうに言い訳していて、被害をこうむった拙にはなんにも言いやしない。

「冗談じゃないですよ、ケガしそうで危なくてしょうがないから今日はブラインド下げるのやめてください」と怒ったら、「でも今(何も)当たってないんでしょ?」と再び笑う。なんじゃそら。そうじゃないだろ!

社則にしろ福利にしろ、業務体系にしても、弊社は社員に対していい加減すぎる。そもそも社長がアダルトチルドレン(古い言葉だね)で、目先の利益と流行にばかり心を奪われているからいけない。やっと育てたスタッフも呆れて辞め、いい人材をみすみす流出させちゃうんじゃないか。同業種他会社に「社長、変わってるンでしょ?」とか冷やかされちゃうんじゃないか・・・。

ひとにすぐ品格を問うてしまうのは、拙の損なクセだ。だが譲れない。

イラついた気分で昼食を食べようとしたら、インスタント・フォーをすくった先割れプラスティック・スプーンの先が1本折れた。不自由ながらも食べ続けたが、舌にガリッと異物が当たり、取り出したら、それは残ったフォークの先っぽだった。もはやスプーンより使いづらい先割れ(てた)スプーンで、ずるずるとフォーをすする。これも神様がくれた、我慢を養う試練か。