テルミン二景

井の頭公園は、旧知の音楽家で東京都公認ヘブンアーティストであるクリテツさんが青空ライブを催している場所。テルミンには、その一線奏者のテクニックを踏襲したスタイルがいくつかあって、いわゆる「お教室」では、そのスタイルをきっちりと習うことになるのだが、クリテツ氏は師匠をもたずまったくの自己流でテルミンをマスターしたそうな。

以前聴かせていただいた時、拙はまだテルミンが弾けなかった。今なら勉強になるかも、と、きれいに晴れた土曜日に吉祥寺へ向かったのだが、あいにくその日、クリテツさんはいらっしゃらず、青空バイオリンやブロンズマン(顔や髪をブロンズに塗り、ブロンズ色の服を着てモーション・パフォーマンスをする大柄なおじさん)、バケツで作った「バケツウッドベース」でデキシーを歌う学生さんなどを楽しんで帰宅。それにしてもバイオリンの音色はアウトドアがよく似合うナ。。。


そして翌日、クリテツさん主催のワークショップで念願のプレイを拝聴できた。改めて聴く氏の音は、すこぶる品がよかった。今回のレパートリーはポピュラーソングばかりだったからかもしれないが、むやみにドラマティックなアーティキュレーションもなく、風のようにするりと奏でていらした。


指の形で音程を記憶したり1オクターブを分割したりする教室的一般奏法と少し違い、指は「グー」のままでアンテナからの位置を把握していくスタイル。拙は「指の形派」なのだけど、音程を安定させることがなかなか出来ず苦戦している。もしかして今後は「グー」でやったほうがいいんだろうか?と、ちょっとばかり逃げてしまいたくなるほど、氏のピッチは安定しており、安心して聴くことができた。まったく拙もあやかりたいものだ・・・。


ワークショップではテルミンの他にマトリョーシカの形をしたテルミンマトリョミン」も用意され、自由に触れることができ、中身も見せてもらえた。


木製の人形の中にテルミンの基盤がタテに組み込まれ、ちょうど頭の部分にピッチを司るアンテナ(テルミンでは直立しているアンテナ)が手前に向かって半円の小さいアーチを描いている。


演奏する時には、手の平に人形を乗せ、底にあるチューニングツマミを動かして人形から演奏者の胴体に向かって「空中弦」を張る。あとはテルミンと同様、手をかざして音程をとる。人形に近づくほどピッチは高くなり、遠ざかると低くなり、やがて無音になる。演奏中は音量を変えられないが、ボリュームツマミはあるので出音のマスター音量だけは調節できる。


拙もさっそく体験。


左手のひらに人形を乗っけたまま人差し指でチューニングのホイールを回すことにまず大苦戦。やっとできたと思ったら、今度は手のひらに人形をキープできない。プルプルと手がふるえ、マトリョミンお嬢さんがプルプルと体をふるわせてしまう。座って足を組み、膝の上に手を固定させ、なだめながらなんとか弾けるようになったけど、これ、思ったより力がいる。もっと軽量にならないのか、とマトリョミン奏者の方にたずねてみたが、あまり軽いと却って手の上で安定しない、とのこと。


マトリョミンは電池駆動だし小型なので、かなり本気で購入を考えているのだが、悲しいことに予算の都合がたたない。5万円ちかくするお人形、誰かクリスマスあたりにプレゼントしてくれないかしら。