癒しを与えてくれるものたち

ぼよーんとテレビを観ていたら、医療関係の特集が連続して放映されていた。ひとつは“仮装"や“笑い"で病人や看護者を癒す紹介、もうひとつは動物と触れ合うことで安らぎを与える「アニマル・ヒーリング」。印象に残ったのは前者の番組で、患者、家族、また医療従事者たちが、ぬいぐるみや帽子、化粧で“仮装"して楽しむことで病と戦う。自宅に戻った余命すくないおかあちゃんは、その家族たちと一緒にフカフカの耳をつけたりして一緒に楽しみ、記念写真を撮っていく。医者も看護婦もぬいぐるみを着て往診に出かけたりする。最期を看取った直後の写真は、おかあちゃんがクマの帽子をかぶり、娘たちがベッドの横でピース(彼女たちの目は赤く腫れていたが)。家族は「たのしい看護だった」と、本当に優しい表情でほほえんでいた。

早いおそいはあるにしても、誰しもそれからは逃れられない。意志をもつまで成長でき、幾晩もかみしめられるほどの思い出をもち、ともに生きる人を得たのであれば、もう人間として十分幸せで恵まれた人生といえるだろう。「人命を救う」ことが昨今過剰にイヴェント化されがちだが、それは本当に救うべきものが救われず、その悲劇とは別の悲劇を生む危険もある。

平和が続き、家族の構成人数も減るごとに「死」に触れる機会が減り、それが日常ではなく非常事態になった。医療が発達し救命度が高まるごとに闘病期間も比例して長くなり、家族もすり減っていく。救うべきは命だけではなく、目の前で命のゆらめきに向かい合う人たちの「心」だと、改めて思った。